求めているものが、なかなか見つからないことがある。
そんな時、どうするだろうか?
スイッチノートの連載の第一弾として、ZOLBONNEの物語からお届けしよう。

「ないものをつくったら、それがブランドに」
それがZOLBONNEのはじまりだった。
今回インタビューするのは、ZOLBONNEの生みの親、デザイナーの城田竜一氏。
どのようにしてZOLBONNEのスイッチプレートが誕生したのか聞いてみる。

ZOLBONNEとはなにか?
ZOLBONNEとは、元祖「トグルスイッチプレート」の専門ブランドだ。
従来は工業用に作られていたトグルスイッチを用いたスイッチプレートは、その無骨さとシンプルさから、工業的なデザインの空間などによく馴染む。
日本でも、近年では住居内装・店舗内装問わず、よく見かけるようになった。
実は日本で最初に、このデザイン、このラインナップでトグルスイッチプレートを製作したブランドこそ、ZOLBONNEなのである。
そもそも聞き馴染みのない「ZOLBONNE(よみ:ゾルボンヌ)」とはどういう意味なのか。
城田:
このスイッチプレートにブランド名をつけるときに、世の中には存在していない言葉を使いたくて、大好きな画家の岡本太郎さんが通っていたフランスのソルボンヌ大学という響きから、なんとなく拝借しました。ヨーロッパでは、昔からトグルスイッチ式の丸いアンティークなスイッチが用いられることが多かったので、こういったところから連想して付けた名前ですね。
と城田氏は答える。

ブランドとしての旗揚げ
「ZOLBONNE」ブランドとしての旗揚げは2013年。創作は2008年に遡るという。
城田:
2007年頃、私の妻(建築士)が、お施主様より「内装に合うような素敵なスイッチを取り付けたい」と依頼を受けました。その方の内装へのこだわりが半端なく、当時まだあまり見ることのなかったナチュラルでヨーロッパの田舎にありそうな佇まいのシャビーな風合いを、自らの手で仕上げていくDIYリノベーションの先駆者のような方でした。入手されたアンティークのスイッチも支給してくださったのですが、それは階段で3路として使うことができずあきらめました。その空間に合うような良い風合いのスイッチは当時の市場では探しても見つからなかったため、妻から「オリジナルで作れない?」と言われたのがきっかけでした。お施主様は写真家で、完成した家やスイッチの素敵な写真をご自身のブログにアップしてくれました。それをみた方からお問い合わせを受けるようになり、オリジナルスイッチの製作活動がゆっくりとスタートしました。

SNSもなかったため、このブログをきっかけに、じわじわとトグルスイッチボックスの評価が上がっていったという。
そして、当時はトグルスイッチプレートではなく、トグルスイッチ”ボックス”として製作していた。
城田:
当時のスイッチプレートは現在のようなデザインではなく、ダイカストでできたカスタム用のボックスにトグルスイッチを取り付けられる、シンプルなものでした。完全に自作でしたので、ご注文をいただいてから、秋葉原まで部品を買いに行ってましたね。

スイッチプレート製作という「ものづくり」を趣味の延長で続けてきたという城田氏。これまでなかったものを作るということに、喜びを感じていた。
それは、現在も所属するファンタジスタ社に在籍しながらのことだった。
城田:
「(ファンタジスタ社の)オフィスの改装をしよう」という話になって、「実はこのようなスイッチを作っていて、よかったら使ってください」と社長やメンバーにプレゼンし、そのために初めて、一般的なスイッチサイズの3mmプレートのデザインのものを作りました。実際にオフィスで使い始めて、「いいものだからブランド化してきちんと販売した方がいい」と強く勧めていただいて、ブランドの設立に至りました。あまりビジョンとかない中でのスタートでしたね(笑)

プレートの形状はうねりがあり、ネジは6角ボルト、刻印も手打ち。


なぜトグルスイッチだったのか
そもそもなぜ一番最初に創作したスイッチプレートにトグルスイッチを選んだのか。
城田:
父が車のカスタムをしており、小さな頃からトグルスイッチに触れる機会が多かったですね。ものづくりが好きでしたので、美術大学へ通わせてもらいながら、父の仕事も手伝っていました。
そこでスクラップパーツをかき集めては、「こんなものがあったらおもしろいな!」と衝動的にモノづくりをしてたりしましたね。こういった工業部品が身近にあったからこそ、妻から「オリジナルスイッチ」の相談があったときも、当たり前のようにトグルスイッチを使いましたし、インテリアに馴染むスイッチボックスとの絶妙な組み合わせを見つけたときも、「これまでにない新しいのもができるかも!!!」と夢中になって作っていましたね!
そう語る城田氏の目は、まるで少年のように輝いている。


ZOLBONNEのスイッチプレートが持つ洗練されたデザインは、幼少期からトグルスイッチに触れていた城田氏だからこそ、醸し出せるのかもしれない。
toolboxとの出会い
そんなトグルスイッチフリークな城田氏が手がけるスイッチプレートが、2010年よりZOLBONNEを冠し、ブランドとして旗揚げをしたのであるが、販売チャネルが全くなかった。
城田:
プロダクトを製品化することは、これまでやってきた仕事とは全く異なり、ブランド運営の明快なビジョンも経験もなく、販売ルートに関する知識も全くありませんでした。そんな時に建築士の妻が紹介してくれたのが、面白い建材をユニークな切り口で販売する通販サイト= toolboxさんでした。「つくったオリジナルスイッチを是非見ていただきたい」とアポを取ると、すぐに対応していただけるとのことで出向いた原宿のオフィスは、大量の建材に埋もれた倉庫のようなおもしろい空間でした。当時の担当の荒川さんと本間さんは試作品を見ていただいた瞬間に気に入っていただき、即お取り扱いいただけることが決まりました。それは勢いのある展開で、運命的な出会いだと感じました。


工芸品なのか、工業製品なのか
toolboxでの販売が決まるとすぐに、プレートの量産をするための生産拠点探しが始まった。
デザイン制作の本業もある城田氏だけでは全ての生産を行うことは難しかったからである。
しかしながら、またも問題に直面する。
城田:
たくさん製品を生産しようと思うと、一つ一つの工程は、工業製品として扱われてしまいます。ZOLBONNEのスイッチプレートは、どちらかというと工芸品。工芸品は、作家がいてこだわりがある。人の手で作られるからこそ味がある。生産先を探す中で、工業製品として均一で安定した数量を求められることに葛藤がありました。


そんなさなか、またしても城田氏に素敵な出会いが訪れる。
城田:
どうやって生産していくべきか?工場や職人さんなど全く人脈がない中、ある美容ブランドを運営する友人にそのことを相談してみたところ「自分の父なら作れるかもしれないよ!」ということで、その場で北海道留萌(るもい)で活動するお父様にSkypeを繋いでいただきました。不安と期待の中、内容をお伝えしたところ「やれると思うよ!」と明るくお返事。お父様の姿はあまりにも眩しく輝いて見えました。この出会いにより、職人さんの手による工芸品としての量産体制が整うことになり、その後10年近くお一人で何万枚ものプレートを作っていただくZOLBONNEのレジェンドとしてご活躍いただきました。


ZOLBONNEが見据えるブランド観
職人による手作りで生産数に上限があるため、当時は完全受注生産という形態であったものの、無事にtoolboxを通してのZOLBONNEのスイッチプレートの販売がスタートした。
はじめの受注数は1桁台だったものの、数ヶ月で2桁台、1年後には3桁台と、toolboxの躍進とともに受注数が伸びていった。
このようにして、ZOLBONNEが産み出した、元祖スイッチプレートが世に羽ばたいた。
当時は単一商品だったスイッチプレートは、現在では4シリーズまで広がり、商品点数は70以上。
そして、2024年末にいくつかの新シリーズがラインナップに加わる予定だ。
改めて、ZOLBONNEのスイッチプレートの魅力とは何か、城田氏に伺ってみる。
城田:
「操作する喜び」ですね。重ねてきた時間と、訪れる未来をパチっと切り替えるその行為に、毎日喜びを感じていただけたらと思います。

